2018 年度 FIT 入試第 2 次選考概要(A 方式)

2017 年 9 月 16 日(土)に実施された慶應義塾大学法学部 FIT 入試(A 方式)の 第2次選考の概要
は、次の通りです。
2018 年度 FIT 入試第2次選考概要(A 方式)

1. 模擬講義の概要
• 講義のテーマ:排外主義とは何か

• 講義の概要:
1. はじめに—排外主義の台頭と社会的分断
2. 排外主義の発生に関わる諸概念
3. 排外主義の活発化に関わる諸概念
4. 事例:X 地区の歴史と現在
*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50 分)を行う。

2. 論述形式試験の概要
• 論述の設問内容:【問題】を参照
• 解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限無し。
• 試験時間:45 分

3. グループ討論の概要
• テーマ(法律学科):
日本の一部の高等学校では、生活指導の一環として、生徒が髪の毛を染めたりパーマをかけたりしているか、生まれつきの髪かを見分けるために、生来の頭髪に関する書類や写真を生徒側に提出させています。実施している学校側には、生徒を誤って指導することを防ぐために必要である、という考えもあります。一方で、身体的特徴を自ら証明させることは問題だ、という指摘もあります。
このような「地毛証明書」制度の是非について、自由に議論してください。

• テーマ(政治学科):
小学生の学習意欲を高めるために親がとる方法にはさまざまなものがあるようです。この目的を効果的に達成するために、例えばテストの点数が上がった場合や宿題をした場合に、子供に褒美を与えてはどうか、という意見があります。一方で、いわば餌で釣る方法は教育的ではなく、むしろ逆効果だという意見もあります。皆さんは、これらの意見についてどのように考えますか。褒美の内容や与え方に限らず、多角的に自由に議論してください。
• 司会者の有無:監督者は、進行とタイムキーピングのみを行い、受験生の自由な議論にまかせる。
• 討論時間:約 45 分
• その他:討論の開始前に一人ずつ 2 分で自己アピールを兼ねた自己紹介を行う。

(問題)
授業で解説された排外主義の発生・活発化のメカニズムを要約し、それを踏まえて X 地区で起こった以下の事例を分析しなさい。なお、X 地区は架空の場所である。

<X 地区をめぐるヘイトスピーチ問題>
外国にルーツを持って X 地区で育ち、学校や職場からドロップアウトした若者のグルー
プが、凶悪犯罪の嫌疑で逮捕された。事件は全国的に報道された。その結果、外国人への
ヘイトスピーチを行う集団が X 地区を標的に定めた。そのヘイト集団は、X 地区における
多文化共生の取り組みは失敗し、むしろ外国人犯罪者を生み出し治安を悪化させたと糾弾
した。そして行政が外国人を支援することは税金の無駄遣いであり、外国人を不当に優遇
し、日本人の既得権益を侵害すると断じた。外国人の多くは不正なやり方で生活保護を受
けていると虚偽の主張を行い、奪われた日本人の権益を「取り戻す」と叫んだ。X 地区の外国人は日本から出て行け、さもなければ殺してやる、などとスピーカーで連呼しながら、かれらは街頭を行進した。
ヘイトスピーチ集団は X 地区の近隣の駅で、そのようなデモを繰り返した。やがて X 地
区にも侵入し、外国人排斥デモを行おうとした。X 地区の住民たちは地域社会を守るために、日本人・外国人を問わず外部の人々と連携して行動を起こした。ヘイトデモへの反対行動を組織し、デモが住宅街に入るのを阻止した。そして警察や行政、裁判所に対策を訴えた。
2016 年に「ヘイトスピーチ解消法」が施行されたこともあり、X 地区を標的としたヘイトデモはひとまず沈静化した。しかしヘイト集団からの執拗な攻撃は続き、地域社会はいまも緊張状態にある。